九州電力剣道部
SITE MENU
七段審査を振り返って
横田 英行

 平成23年11月25日(金)、日本武道館にて行なわれた七段審査に於いて、図らずも初挑戦で合格することができました。
これまで諸先生、諸先輩、後輩諸君並びにその他多くの方々から頂戴しましたご厚情とご指導に対し心より感謝すると共に改めて御礼申し上げます。本当に有難うございました。
審査当日、応援に駆けつけてくれた園田六段から、当夜二人だけの祝賀会で「是非とも先輩の受審に際してのプロセスやノウハウを教えて欲しい」との要請を受けました。
恥ずかしながら6年前に東京で六段合格を果たした時にも「六段審査を終えて」の題名で反省文を記し、幾人かの後輩諸君から参考になったとの言葉を頂き嬉しく思いました。
今回も冷汗三斗の思いは変わりませんが、お世話になった皆様方への恩返しのつもりで
七段受審回顧録を記してみたいと思います。
これから後に続く皆さんの為に少しでもお役に立てれば幸いです。

  1. 六段審査時との違い(心・技・体について)
    (1)  心
      ① 日頃の稽古の中で
      角師範の教えに従い、縁を切らない稽古を心掛けて
    • 「打ちたい・打つぞ」から「さぁいらっしゃい・来ないなら行くよ」へ変化した。
    • 打間に入る時「どうしよう?」から「どうする?」と問いかけるようにした。
      ②日常生活の中で
    • 不測の事態や辛い出来事があっても、受審の為の鍛錬であり心の強さを試されているのだと考え「平常心」を保てるよう心がけた。(できない時も沢山あった)
    • 特に審査前3か月間は何があっても絶対怒らないと誓い実行した。
    (2)  技
      ① 基本稽古を徹底して行なう
    • 面、籠手、応じ技の素振りを自宅のマンション玄関前でほぼ毎日20分程実施。
    • 防具をつけての稽古では打突後の勢いを大切にして、特に、面打ちでは相手の向うに抜けると共にすぐに振り返り1歩前に出て縁を切らないことを心掛けた。
      ②発声(気合)に威力をつける
    • 六段審査時に角師範よりご指導頂いた内容そのままに
      「 不合格となる者は総じて声が小さい、ましてや中央審査の会場は広い。 会場一 杯に轟き渡るような声で、お相手を威圧するとともに審査員の 先生方の興味を引 くべし」
      その教えを守り、胎から出る声の出し方を探求し、身につけた。
    • (注)受審者の中で一番声が大きく武道館の天井まで響いていた(園田氏の評価)
    (3)  体
      ①切れる体造り
      平成9年4月、宮崎遠征の際、(故)吉本先生(八段)からご指導頂いた言葉。
      「良い剣道をするためには、
    • 体が良くキレるようにしておくこと。(体は要をなす)
    • 気がキレること。
    • この2つができていなければ「技」はキレない」
    • この教えを守り、今年に入りウォーキングとダイエットで6kg減量した。
  2. 防具等へのこだわり

     六段を合格した直後に防具を新調(長崎県諫早市:三恵武道具)し、国際大会(アジアオープン2年連続ベスト8)や電力親善大会で着用すると共に自身の中で七段審査を常にイメージし、一張羅を着て品のある稽古や試合を行うよう心がけた。
    また、竹刀には4年前頃からオリジナルにこだわり続け、南区の金子先生(八段) の教えを乞いながら、左右の握りはミリ単位で試行錯誤を繰り返し、審査前1ヶ月頃になり、ようやく「これだ!」という代物に出会うことが出来た。
    この防具達は、勿論、日頃の手入れや管理の大切なことは言うまでも無いが、こだわりを持って可愛がることにより、更に愛着が増し、ここぞと言う時にまさしく己を守る強い見方になってくれたと思う。
    余談だが、合格当夜は興奮冷めやらぬまま、午前2時過ぎまで眠れず翌朝起床した時には防具と竹刀を抱いて寝ていた。

  3. 立会い
    (1人目) 順番は1番目のA、お相手はB

    入りの所作の後ゆっくり立ち上がった。
    5つ数を数えて胎から声を出す。
    Bが後から発声したのでもう一度Bを上回る気合を出した。
    20秒ほど剣先での探り合いを行なう。
    Bは出て来ない人と観て触刃の間合いから一機に打間に入り真直ぐ面に飛ぶ。
    Bが首を傾げて横から右籠手を打った為こちらの右拳に当るも、気にせず打ち切る。
    空振りだったが構わずBの向う側まで抜けて振り返り1歩前に出た。
    この後、同じような攻めを3回繰り返したが自分の有効打突は1本も得られなかった。
    最後に最初と同じような籠手を頂戴したが、気にせず打ち抜けて残心を取った。
    また、立会中、Bからの攻めは殆どなかったため、ビクつくことなく動じなかったが少し打ちあぐねた感があった。(角師範に福岡での最後の稽古をお願いした時、打って・打って・打ちまくれと言われていた)
    縁を切らなかった為か、他の受審者よりも立会っている時間は長く感じられた。

    (2人目) 順番は4番目、お相手はD

    1人目の立会いを反省しながら修正点を幾つか考えた。
    同時にDを良く観察しながら息を整え、冷静さを取り戻す。
    Dは出てくるタイプと診た。(立ち上がり10秒ほどは1人目とまったく同じ。)
    案の定、Dが打ちたがっているような兆しが観て取れた。
    Dの鍔元を攻め面に引き出す。
    何かを打とうという気持ちは無かったが、無意識に体が反応し籠手を打っていた。
    バコッ(園田氏談)と、乾いた音がして両手の内に心地よい打感が残っていた。
    一旦離れて、再び打間に入ろうとした時、Dがこちらの籠手をチラリと見た。
    籠手を少し空け「籠手に来い、籠手に来い!」と間を詰めると、思惑通り籠手に出て
    来たので1拍子で抜いて面を打つと、基本打ちで打つような面がバコ~ッ(園田氏談)
    という音と共に綺麗に決まった。
    Dが竹刀の先をこちらの喉元につけようとして前に出てきたので、面を打ち切ったまま
    の姿勢で下がりながらすり足にて間を切った。
    この後からDは焦り始め、面に来たところを諸手で抜き胴、再び分かれて相殺の面。
    最後に審査員席の真ん前で触刃の間合いから二度鍔元を攻めての籠手がバク(園
    田氏談)と決まり、間もなく止めがかかる。
    やはり二人目も立会時間は長く感じられ、終わった後は声が涸れて喉が渇いていた。

    1次の合否発表は17時を過ぎていた。自分の番号を見つけた時、恥じらいも無く咄嗟に園田氏の手を握り締めていた。
    【共通して良かったと思われる点】
    ① 大きな声を出した。
    ② 勢いある技を打ち切った。
    ③ ビクつかなかった。
    ④ 近間でガチャガチャ打たなかった。
    ⑤ 背中が美しく見えるよう心がけた。(背筋を伸ばす・胸を張る)
    ⑥ 1人目で躓いても、2人目の立会いが終わるまで合格を決して諦めなかった。
    ⑦ 孤独な受審ではあったが、身内の応援が得られリラックスと励みを持てた。

  4. 日本剣道形

    結論から言うと、お相手(仕太刀)が1次合格者の内、ただ一人「形」で落ちた。
    太刀の形で2箇所、小太刀で最後の引き足(最大のポイント)で1箇所間違われた。
    審査員の目の前での演武であり、間違いを訂正しようとしなかったために不合格。
    自分のお相手だけに何か申し訳なく思えたが、形は1本でも間違えれば必ず落ちる。

  5. 最後に

    自分が学んで来た剣道が正しいのか否か?その段位に相応しいものかどうか?を日本剣道界の最高位の諸先生方から診てもらえるのが中央に於ける昇段審査であると思う。
    日頃からご指導頂ける先生方の声を素直に受け止め、真摯に稽古を積み重ね、必死になって審査に望むことができれば、おそらく誰でも六段・七段合格までの道程はそう遠くないのではなかろうか。
    私のような2段取得後、35歳までの間に15年間のブランクを持つ者でもこの歳で七段を拝受することができた。後輩諸君に出来ぬはずは無い。
    今後とも少しでも“剣道の真髄”を究められるよう、皆さん方と共に、楽しみながら切磋琢磨して行けたらと心より願っている。

▲ 戻る